宮下和士(2018-2019年度会長)

会長挨拶

 近年のサケの回帰の減少に伴い、その漁獲の中心である定置網漁業による漁獲は著しく減少しています。またこのことは魚価高騰や加工原料不足などを招き、加工、流通に至る地域の経済にも少なからず負の効果を与えていると考えられます。

 以上の背景より、これまでにも関係する多くに方々によりサケ資源を回復させるためことを目的とした様々な調査・研究が実施され、その結果をもとにした施策なども多数講じられて来ました。また、サケ学研究会(以降当会)でもこれまで特集・シンポジウムにおいてサケ資源を取り巻く諸問題について取り上げ、これら直面する危急の課題を解決するための努力を続けてきました。そして今後もこの方向性は変わらないもと考えられます。

 一方で、温暖化傾向にある昨今の環境において、南限に近い位置にある我が国のサケ資源を人為的努力のみで回復させることには限界があることも現実です。そしてそのような環境の中でもサケを生業としたコミュニティが持続するよう、新たな視点、発想をもってサケと向き合うことが今後必要になると考えられます。

 折しも来年2019年は「国際サーモン年」に制定され、変動する環境下におけるサケの仲間と人々との関わりを見つめ直す年と位置付けられます。そして我が国においても持続可能な資源管理に向けた研究や技術開発に加え、サケ科魚類と人との関わり方に対する普遍的・多面的な理解の促進が求められます。

 上記を鑑み私は会長として、これらサケ科魚類をとりまく諸問題、科学的謎を解決するための活動の場として、当会をこれまで以上に機能させられるよう運営して行く所存です。また、学術的側面からも考え方、アプローチの多様性が保障され、かつ適度な緊張感を保ちつつも居心地の良い場として当会が機能するよう努めたいと思っておりますので、今後とも当会の運営にご理解、ご協力をいただけたらと存じます。