浦和茂彦(2016-2017年度会長)

会長 あいさつ(2016 -2017年度)

 サケ学研究会では、サケ科魚類の科学、すなわちサケ科魚類と人間がかかわる生態学、生理学および遺伝学などの生物学、サケ科魚類を取り巻く水圏生態系における環境科学、漁業、増殖、養殖業などの産業科学、サケ科魚類と文化などの社会科学を探究する学問領域において、その科学の深化と発展、研究成果の社会への貢献を目的としています。

 昨今、サケ科魚類を取りまく環境は厳しいものがあり、人間活動と地球温暖化はサケ科魚類の分布、回遊および生活史に影響を及ぼしております。例えば、サケは北日本の重要な沿岸漁業対象種ですが、温暖化によりその分布、回遊や生残が脅かされつつあります。北海道に分布するオショロコマは、河川の人工工作物や温暖化などの影響を受け、河川水温が上昇し摂餌行動や分布域が制限されつつあります。河川生態系は海と陸の生態系をつなぐ役割を果たし、サケ科魚類はそれら生態系への物質循環の重要な担い手ですが、ダム建設などにより河川生態系が著しく損なわれ、生息基盤そのものが失われつつあります。さらに、わが国の淡水生態系へ侵入した外来種は様々な影響を在来種に及ぼしています。

 折しも現在、サケの仲間と人類の関係を見つめ直し、広域的に共同研究を助長する「国際サーモン年」が計画中です。本研究会では、サケ科魚類とそれらが生息する水圏生態系の持続可能な保全管理をめざし、生物学、環境、産業や社会科学に関わる研究を発展させると共に、次世代を担う若手研究者の育成や他分野との学際的交流にも努力していきたいと思います。皆さまのご支援とご協力をお願い致します。

 

浦和茂彦(2016-2017年度会長)